
松山の夜は、酒場とスナックの灯りが主役——そんな空気に、ある日どんと現れた“見るために集う大箱”。ちゅらさん6は、那覇に足りなかったショー型エンタメを正面から持ち込み、松山の地図に新しい目的地を作った存在だ。2024年春にオープンして以来、「国内最大規模のショークラブ」を掲げる看板は伊達じゃない。舞台と客席の距離が近く、拍手ひとつで場の温度が上がる。

扉をくぐると、まず“空間”に圧倒される。コンセプトは「宇宙船の底」。円形の花道と巨大LED、天井一面のリギングに仕込まれた約400台の照明が、ダンサーの動きに呼応して色と速度を変える。音はd&bのシステムが下支えしていて、低域の押し出しが気持ちいい。言い換えれば、那覇でこれほど“仕掛け”に振った舞台は珍しい。
系譜で言えば、バーレスク東京の流れを汲む店だ。実際、系列店としての言及や、同店の中心メンバーがちゅらさん6の運営に関わる発信も見かける。つまり「踊りと演出で夜を祝う」あの文法を、沖縄に最適化したかたち。

システムは“ステージ単位で楽しむ”のが基本。最前列の迫力重視からソファ寄りの落ち着き席までプランが分かれ、プランによっては入場時にチップが付くものもある。演目の合間にキャストと写真を撮ったり会話したり——劇場とクラブのいいとこ取り、というバランス感だ。
ここならではの文化が、1枚100円のチップ「ちゅらん」。10枚綴りで手に入れて、“刺さった”瞬間にそっと手渡す。推しの伝え方は人それぞれで正解はない。タイミングはスタッフが教えてくれるし、特定の枚数以上で受けられる特典もある。遊び方が“君次第”という余白が、熱量を生む。

ステージは振れ幅が広い。艶やかな和装でのナンバーから、きらびやかなダンス、ポールやアイドル的な構成まで、切り替わるたびに照明と映像が景色を塗り替える。最新のクラブチューンで一気に跳ね上げたかと思えば、どこか懐かしいメロディで客席全体が口ずさむ瞬間もある。肩の力を抜いて手拍子を重ねているうちに、時間が溶ける。

地元目線で付け加えるなら——私の体感では男性グループが目に入りやすいが、若い女性や年配の方も普通に混じって楽しんでいる。観光の夜に“ひと山”作りたい人、仕事帰りに非日常で気分転換したい人、どちらにも間口が広い。拍手と「ちゅらん」があれば、初めてでも十分乗れる。むしろ、ここは“祝う力”を持ち寄る場所だと思う。
派手さだけを目当てに行ってもいい。けれど本当の魅力は、観客が演目の一部になっていく巻き込み力にある。松山にこんな“祝祭の箱”ができたこと自体がニュース。那覇の夜に余白が生まれた——そんな感覚を持てるショーラウンジだ。

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※写真は公式HPより引用