
やちむんの里として知られる壺屋。観光客で賑わうメインストリートから一本、細い路地へと足を踏み入れる。喧騒が遠ざかり、どこか懐かしい空気が流れ始める。そんな場所に、その店はひっそりと暖簾を掲げている。
「リゾム」
特別な日に選ぶ店ではないかもしれない。けれど、なんだか無性にここのご飯が食べたくなる日がある。
ここの魅力は、と聞かれたら「ちょうどよさ」に尽きる。パリッと焼かれた皮目、箸を入れるとふわりと湯気が立つ魚の塩焼き。丁寧に作られたとわかる小鉢。奇をてらうことなく、実直に美味しい。外食の華やかさというよりは、誰かの家でいただくような、あたたかい家庭の味だ。

店内はいつも静かだ。余計なBGMはなく、聞こえるのは厨房から響く小気味よい調理の音だけ。寡黙な店主が黙々と腕を振るう姿が、この店の空気を作っている。無理に話しかけられることもなく、ただゆっくりと食事に向き合える。その時間が、たまらなく心地よい。
このあたりに慣れていない人は、少しだけ気をつけてほしい。店の前の道は一方通行で、駐車場もない。近くのコインパーキングに車を停めて、少し歩くことになる。
それでも、わざわざ足を運びたくなる。派手さはないけれど、確かにここにあるもの。そんな「いつもの味」に、今日も私たちは会いにいく。
【食べログ】